墓地の奥の一角に、白い立札がいくつも並んでいた。
「このお墓の縁故者の方は、1年以内に申し出てください」。
そうした趣旨の文字が書かれた立札は、管理する人がいなくなったお墓を整理するために立てられるものです。
お墓を継ぐ人がいない。
そう気づいたとき、多くの方が「無縁仏にしてしまうのでは」と不安になります。
継ぐ人のいないお墓は、何もしなければ、いつか誰かが整理することになります。
永代供養は、その「誰が」「いつ」を、ご自身で決めて契約しておくことです。
お墓を継ぐ人がいないと、何が起きるか
「無縁墓」とは
無縁墓とは、お墓を守る縁故者がいなくなったお墓のことです。
法律では「無縁墳墓」と呼ばれ、墓地埋葬法施行規則では、死亡者の縁故者がない墳墓または納骨堂と定められています。
お墓は、区画を使う権利を持つ「使用者」が管理料を納め、清掃や手入れをすることで保たれています。
使用者が亡くなり、跡を継ぐ人もいなくなると、管理料は途絶え、お墓は手入れされないまま残ります。
無縁墓は、すでに各地で生まれている
総務省は令和5年9月、自治体が経営する公営墓地の無縁墓について、初めて全国的な調査の結果をまとめました。
公営の墓地や納骨堂を持つ765の市町村のうち、約6割にあたる445の市町村が「無縁墓がある」と答えています。
調査では、雑草が茂り、墓石が倒れたまま放置されている例も確認されています。
荒れたお墓は、周りの環境を悪くし、隣の区画の使用者とのトラブルの原因にもなりかねません。
樹木の伐採のために毎年予算を組んだり、倒れかけた墓石に職員が防護柵を設けたりしている自治体もありました。
公営の墓地や納骨堂は、全国の墓地・納骨堂のごく一部です。
寺院や民間の霊園、集落の墓地に同じような無縁墓がどれだけあるかは、まだよく分かっていません。
無縁墓は、最後にどう整理されるか
無縁墓をそのままにはしておけないため、墓地の管理者は、いずれ整理のための手続きをとることになります。
この手続きを「無縁改葬」といいます。
改葬の流れは法令で決まっています。
- 墓地の管理者が、亡くなった方の本籍と氏名、縁故者は1年以内に申し出るように、という内容を官報に掲載する
- あわせて、そのお墓の見やすい場所に立札を立て、1年間掲示する
- 1年のあいだに誰からも申し出がなければ、その旨の書面や官報の写し、立札の写真を添えて、市区町村に改葬の許可を申請する
- 許可を受けて、お墓からご遺骨を取り出し、合葬墓などに移す
冒頭の立札は、この公告のためのものです。
手続きをとるのは、公営墓地なら自治体、寺院の墓地なら寺院、民間の霊園なら霊園の経営者です。
取り出したあとの墓石の扱いについては、これまで決まった考え方がなく、自治体が撤去をためらう例もありました。
国は令和7年12月、無縁改葬のあとの墓石の扱いについての考え方を整理し、自治体に示しています。
公営墓地では、どこで「無縁」と判断されるのか
公営墓地の場合、無縁改葬に至るまでには、官報と立札の公告のほかにも段階があります。
国の研究報告では、主な流れが次のように示されています。
- 対象となるお墓を決め、現地を調べる
- 立札を設置し、官報に掲載する
- 使用者の戸籍などを調べ、存命の使用者には管理料を請求し、縁故者には承継を促す
- それでも承継されないお墓について、使用者や縁故者に通知し、聴聞の機会を設ける
- 使用の許可を取り消し、無縁改葬の手続きに入る
手間と時間のかかる手続きで、自治体にとっても大きな負担です。
総務省の調査でも、祭祀を承継する人がいないと断定できないために、改葬や墓石の撤去をためらう例が報告されています。
連絡先を届けておくだけで、変わることがある
総務省の調査では、無縁墓になるのを防ぐうえで、使用者だけでなく、その縁故者の連絡先を管理者が把握しておくことが大切だと指摘しています。
使用者の情報に比べて、縁故者の情報の把握はあまり進んでいませんでした。
一方で、あらかじめ縁故者の連絡先を届けてもらっていたことで、使用者と連絡がとれなくなったときに、すぐに所在を確かめられた例もありました。
今すぐお墓をどうするか決められなくても、お墓の管理者に、ご自身のほかに連絡のとれる家族の名前と連絡先を伝えておくことはできます。
それだけで、あとの話し合いの糸口が残ります。
「無縁仏になる」とは、どういうことか
「無縁仏」は、弔ってくれる縁者のいない死者や、その霊を指す言葉です。
ここで一つ、よくある誤解をほどいておきます。
永代供養の合祀墓に納められたご遺骨は、ほかの方のご遺骨と一緒に眠ります。
けれども、それは無縁仏になることとは違います。
違いは、供養と管理を引き受けている人がいるかどうかです。
無縁改葬で合葬墓に移されるのは、引き受ける人がいなくなった結果です。
永代供養は、寺院や霊園が供養と管理を引き受けることを、生きているうちに約束しておく契約です。
同じように合葬墓に眠ることになっても、そこに至る道筋が違います。
永代供養とは、お墓の管理を契約で託すこと
永代供養は、お墓の形ではなく管理の方式
永代供養は、ご遺族に代わって寺院や霊園が供養と管理を続ける仕組みを指す言葉です。
墓石の形でも、場所の種類でもありません。
合祀墓、樹木葬、納骨堂、どの形にも、永代供養のついたものと、家族が承継していくものがあります。
供養先を「承継の有無」「安置の形態」「場所の形」の3つの軸で整理する方法や、具体的な施設・事業者の選び方は、別のページで詳しくまとめています。
▶ 永代供養の3つの軸と、事業者6社の比較を見る
施設の名称や合祀の条件を公開しているかどうかも比べています
国の雛形では「委託する契約」
国は平成12年、墓地の契約の雛形として「墓地使用に関する標準契約約款」を示しました。
この雛形は、墓地の契約を2つの型に分けています。
| 型 | 想定しているお墓 | 契約の中身 |
|---|---|---|
| 墓地使用権型 | 代々承継されていくお墓 | 区画を使う権利を得る。使用者が管理料を払い続ける |
| 埋蔵管理委託型 | 承継を前提としないお墓(永代供養墓など) | ご遺骨の埋蔵と管理を、経営者に任せる |
永代供養墓の契約は、区画を使う権利を買うものではありません。
ご遺骨を納め、管理し、供養することを、寺院や霊園に任せる契約です。
国は、契約した人が亡くなったあとも効力が続く委託の関係として整理しています。
契約で決まること
雛形の委託型の契約では、次のことを決めておく形になっています。
- 誰のご遺骨を納めるか
- どの区画に納めるか
- どのような管理や供養を行うか(清掃や除草、供花など、付属の文書で具体的に定める)
- 埋蔵から何年たったら、合葬墓や納骨堂に移すか
- 料金はいくらか
- 解約するとき、料金はどう扱われるか
永代供養の契約書を読むときは、これらが書面で決まっているかを確かめてください。
永代供養のデメリットと、知っておきたい限界
合祀のあとは取り出せない
合祀では、骨壺からご遺骨を出して、ほかの方のご遺骨と一緒に埋葬します。
一度混ざったご遺骨から、特定の方の分だけを取り出すことはできません。
国の雛形でも、ご遺骨が合葬墓や納骨堂に移されたあとは、契約を解除できないとしています。
やはり近くに移したい、一部を手元に残したい、と思っても、合祀のあとではかないません。
迷いがあるうちは、一定期間は個別に安置される形を選ぶか、ご遺骨の一部を分骨して手元に残しておく方法があります。
「永代」は永遠ではない
「永代」という言葉から、ずっと個別に安置されるように思われがちです。
けれども、国の雛形は「埋蔵から◯年を経過したら、合葬墓や納骨堂に移すことができる」という形になっています。
国はその理由も示しています。
代々承継されていくことを想定しないお墓を、永久に個別で管理すると、将来の管理費用の確保が難しくなる。
一定の年数で合葬し、空いた区画を新たに提供することで、墓地全体の管理を続けられる、という考え方です。
「合祀されない」「ずっと個別に安置」とうたう施設もあります。
その場合は、何十年先の管理の費用をどう賄うのかを尋ねてみてください。
個別に安置される期間をいつから数えるのかも、施設ごとに違います。
永代供養でも、管理料がかかる場合がある
国の指針は、墓地の料金を大きく2つの型に分けています。
契約のときの「使用料」と毎年の「管理料」を組み合わせる型と、将来にわたる管理を一括で任せる「永代供養料」の型です。
永代供養をうたっていても、毎年の管理料や護持費がかかる施設があります。
管理料を払えなくなったときの扱いは、雛形では次のような流れです。
- 一定の年数にわたって管理料が払われなければ、経営者は支払いを催告し、それでも払われなければ契約を解除できる。
- 契約が終わったあとも、ご遺骨が引き取られないまま一定の年数がたてば、合葬墓や納骨堂に移すことができる。
誰が、いつまで管理料を払うのか、払えなくなったらどうなるのかを契約の前に、書面で確かめてください。
また国の指針は、「永代使用」と書かれていても、実際には管理料を払っている間だけ使える契約である場合がある、と注意を促しています。
墓地を経営する法人がなくなることもある
永代供養は、何十年にもわたってご遺骨を預ける契約です。
国の指針は、墓地を経営する法人が破綻した例や、実質的な名義貸しが疑われる例があったことを認めています。
誰が経営している墓地なのか。その法人は、いつから墓地を運営しているのか。
契約の前に確かめておきたいところです。
手を合わせる場所の実感
合祀墓の前にあるのは、多くの方と共同の石塔や碑です。
「◯◯家之墓」と刻まれた、自分たちだけの墓標はありません。
そのため、ご高齢の親族や信仰心の篤い方ほど、どこに向かって手を合わせればいいのか戸惑われることがあります。
花や線香のお供えに制限のある施設もあります。
契約の前に、ご家族で現地を見ておくと安心です。
選択肢を並べてみる
お墓を継ぐ人がいないとき、とれる道は永代供養だけではありません。
代表的な3つを挙げます。
| 今のお墓を継ぐ人を決める | 永代供養にする | 海洋散骨・手元供養にする | |
|---|---|---|---|
| 管理する人 | 家族や親族の誰か | 寺院や霊園 | 管理する主体はない |
| 費用のかかり方 | 毎年の管理料と、法要などの費用が続く | 契約時の一括払いが中心。管理料がかかる施設もある | 実施時の費用が中心 |
| 手を合わせる場所 | 今のお墓 | 施設の墓や碑 | 決まった場所はない。散骨した海や自宅 |
| あとから変えられるか | 改葬すれば変えられる | 合祀の前なら移せる場合がある。合祀後はできない | 散骨したご遺骨は戻らない |
今のお墓を継ぐ人を決める場合も、その人がいずれ同じ問いに向き合うことになります。
先送りにするのか、自分の代で決めておくのか。
どちらを選ぶかは、ご家族の事情しだいです。
公営墓地を使っている場合は、自治体が用意する合葬式の施設に移すこともできます。
国の調査では、承継が難しくなった人のために、合葬式の施設へ移すときの使用料を免除している自治体の例も紹介されています。
お墓のある自治体の窓口に尋ねてみてください。
▶ 海洋散骨という選択肢について読む
墓じまい後のご遺骨を海へ還すときの注意点と、分骨という方法
▶ 樹木葬という選択肢について読む
同じ樹木葬でも施設ごとに違う3つのこと
ご家族・ご親族と話すとき
墓じまいをやめた理由
お墓をどうするかは、ご自身だけで決められることではありません。
とはいえ、「親族が反対するのでは」という不安が大きすぎて、話を切り出せない方もいます。
調査で分かったことを見てみましょう。
| 墓じまいを検討したが、やめた理由 | 割合 |
|---|---|
| 解体費用が高すぎた | 22.2% |
| 先祖にうしろめたい気持ちになった | 11.1% |
| 家族・親戚から理解を得られなかった | 7.8% |
親族の理解が得られずにやめた人は、前回の調査より減っています。
代わりに増えたのが、「先祖にうしろめたい」というご自身の気持ちでした。
反対より先に、自分の中の後ろめたさが壁になることがある、ということです。
永代供養は、先祖を手放すことではありません。
守る人がいなくなる前に、守ってくれる相手を決めておくことです。
まずご自身がそう受け止められると、ご家族にも伝えやすくなります。
伝え方のコツ
「お墓をなくす」ではなく「お寺に守っていただく」と伝える
同じ内容でも、「墓じまいをする」より「これからはお寺に永代にわたって供養をお願いする」と伝えるほうが、ご先祖を託す決断として受け止められます。
このままにした場合、誰が何を引き継ぐかを示す
お墓をそのままにすれば、次の世代が管理料や手入れ、いずれは墓じまいの判断まで引き継ぐことになります。
継ぐ人がいなくなれば、最後は管理者が整理することになる。
この事実を共有すると、話が具体的になります。
一緒に資料を見るところから始める
最初から「永代供養にしたい」と結論を伝えると、相手は身構えてしまいます。
いくつかの施設の資料を一緒に見ながら、「ここは静かで良さそうね」と話すうちに、考えが近づいていくことがあります。
決める前に確かめたいこと
施設を選ぶ前の段階で、ご家族と確かめておきたいことをまとめました。
- 今のお墓を、この先誰が継ぐのか。継ぐ人がいない場合、いつ、誰が決めるのか
- ご遺骨を、ほかの方と一緒に納めてもよいか。一定期間は個別に安置したいか
- 手を合わせる場所は、どこにあってほしいか。誰が通うのか
- 毎年の管理料を払い続けられるか。払えなくなったとき、誰が引き継ぐのか
- 今のお墓の管理者(寺院や霊園、自治体)に、どのような相談先や制度があるか
施設ごとに確かめる項目(合祀の時期、期間の起点、納骨できる数、解約時の返金、運営する法人など)は、事業者の比較ページにまとめています。
▶ 永代供養の事業者6社を比較する
契約の前に確認したい6つのことも載せています
▶ 墓じまい代行の事業者を比較する
墓じまいから移転先の手配まで、まとめて相談できます
よくあるご質問
Q. 永代供養にすると、無縁仏になりますか。
なりません。
合祀墓に納められても、寺院や霊園が供養と管理を引き受けている限り、弔う人のいない無縁仏とは違います。
ただし、経営する法人がなくなる可能性はゼロではないため、運営している法人を契約の前に確かめてください。
Q. 今のお墓のまま、永代供養に切り替えられますか。
寺院や霊園によって対応が違います。
承継する人がいなくなったあとの扱いを、今のお墓の管理者に相談してみてください。
公営墓地の場合は、自治体が用意する合葬式の施設へ移す方法もあります。
Q. 檀家をやめなければいけませんか。
菩提寺の永代供養墓に移すなら、檀家のまま続けられる場合があります。
別の施設に移す場合は、離檀について菩提寺と話し合うことになります。
条件は寺院ごとに違うため、早めに相談してください。
Q. 永代供養でも管理料はかかりますか。
施設によります。
契約時の一括払いだけで済む施設もあれば、毎年の管理料や護持費がかかる施設もあります。
払えなくなったときの扱いとあわせて、契約の前に書面で確かめてください。
Q. 契約したあとで解約できますか。
国の雛形では、委託者はいつでも書面で解約できるとしたうえで、合葬墓に移されたあとは解約できないとしています。
まだ納骨していない場合は、一定期間内の解約なら料金の一部を返すという形です。
返金の条件は施設ごとに違います。
Q. 生前に申し込めますか。
申し込める施設が多くあります。
国の雛形も、ご自身が生前に契約し、亡くなったあとの埋蔵と管理を任せる形を想定しています。
契約書の保管場所と契約内容を、ご家族に伝えておいてください。
まとめ
- 継ぐ人のいないお墓は、何もしなければ、官報と立札による1年間の公告を経て、墓地の管理者が整理することになります
- 公営墓地を持つ市町村の約6割に、無縁墓があります
- 永代供養は、ご遺骨の埋蔵と管理を寺院や霊園に任せる契約です。合葬墓に眠ることになっても、無縁仏になることとは違います
- 合祀のあとは取り出せません。「永代」は永遠ではなく、管理料がかかる場合もあります
- 誰が、いつ、どのように守るのか。それを自分の代で決めておくのが、永代供養です
急いで決める必要はありません。ご家族と話し、施設を見て、納得できる形を選んでください。
▶ 永代供養の事業者6社を比較する
施設の名称や合祀の条件を公開しているかどうかも比べています
参考・出典
- 総務省行政評価局「墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」(令和5年9月)
- 総務省「墓地行政に関する調査 <通知に対する改善措置状況(2回目のフォローアップ)の概要>」(令和8年4月)
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則 第3条
- 厚生労働科学研究費補助金「墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究」平成26年度総括研究報告書(平成27年3月)※無縁改葬の流れ(総務省の報告書での引用による)
- 厚生省生活衛生局長通知「墓地経営・管理の指針等について」(平成12年12月6日)別添1「墓地経営・管理の指針」・別添2「墓地使用に関する標準契約約款」
- 株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」(2026年3月17日公表)
記載は2026年9月時点の情報です。